情熱とチャレンジが
生み出すもの、
動かすもの

何が自分を動かすか、自分の原動力を人や社会へどう還元するか

vol.01
水滴写真家
浅井美紀
水滴写真家 浅井美紀

対談企画ミライビト

山口 正智
株式会社ベルテクス・パートナーズ
代表取締役社長
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浅井 美紀
水滴写真家

「ミライビト」とは、様々な道のりを経て自らの可能性を追求し未来へと進むあなたのこと。
夢と想いを胸に新たな未来を切り開くビジネスパーソンやクリエイターにフォーカス。
未踏の頂を目指す「ミライビト」の姿を追う。

ベルテクス・パートナーズの仕事とは

  • 浅井(以下、浅):はじめに山口さんの会社や仕事について教えてくださいますか?
  • 山口(以下、山):我々の会社は経営コンサルティングを行っています。「コンサル」は簡単に説明すると「企業のお医者さん」なんです。
  • 浅:「企業のお医者さん」ですか。詳しく説明していただけますか?
  • 山:「ここが痛い」「こうしたい」と思っても、痛みや症状を改善する方法が分からないときは、皆さんお医者さんに相談すると思います。お医者さんは患者さんについてヒアリングしたり検査したりすることで、症状や悩みの原因を特定し、どのような治療やリハビリが必要なのかを患者さんに丁寧に説明してくれますよね。そんな感じで、企業と一緒に目標へ進むことを行っています。
  • 浅:なるほど。確かに、お医者さんとコンサルには共通点がありますね。
  • 山:事業が拡大し、企業規模が大きくなるにつれて、さまざまな課題を抱えるようになります。「社員がどんどん辞めてしまう」「外注先が見つからない」といった組織の悩みもあると思いますし、業務や事業について「コストが増えて利益が出ない」「新規事業をやりたいけれど顧客が見つからない」というものまで…。そういった悩みや問題に関するいろいろな情報を提供したり、ディスカッションしながら改善をはかったりして、一緒になって解決していくのが経営コンサルティングですね。

浅井さんの写真との出会い「好き」が「仕事」に

  • 山:浅井さんとカメラとの出会いについて、教えていただけますか?
  • 浅:息子が手を離れて数年後、ようやく自分の時間が持てるようになってからの出会いなんです。私自身、趣味は持っていませんでしたけど、写真を見ることは好きだったんですね。子どもの頃から友達の家でアルバムを見せてもらったり、旅行ツアーのチラシを眺めたり…。インターネットが普及してからはFlickrという写真メインのSNSをしょっちゅう見ていました。そのなかでも、お花や蝶の翅(はね)のクローズアップといった写真に惹かれてたんです。ただ、その当時は自分で撮るという概念はありませんでした。
  • 山:それがどこかのタイミングで「自分で写真を撮ろう」と思い立ったわけですよね。
  • 浅:そうなんです。2012年の5月の日曜日に、突然思い立って近所のカメラ屋さんに大事な生活費の10万円を持ってカメラを買いにいったんですよ。何の前触れもなく、です。今考えても不思議で「なんで買いにいったの?」って聞かれても、私もなぜだったのか本当に分かりません…。
  • 山:「ひらめき」だったわけですか!それは驚きです。
  • 浅:興味を持っていたクローズアップの写真を撮影するためには、マクロレンズというものが必要だと分かっていたので、カメラと一緒にそのレンズも買いました。カメラを手に入れて早速、庭でファインダーを覗きながら被写体を探していると、草の葉っぱに朝露がコロコロと乗っているのを見つけました。これがすごく美しかったんです。その朝露をよく見ると、向こう側にある木が中に映りこんでいて、それをどうしても撮りたいと思いました。でも、撮影方法が分からない…。「目には見えているんだから撮れるはず…!」と、設定をあちこち変えながら撮ってみましたが、結局そのときはうまく撮れずじまいでした。だけど、朝露とその美しさを発見したそのときの感動がどうしても忘れられなかったんです。
  • 山:「あ、これだ!」って思えるものを最初に撮れたのは、それからどれくらいかかりましたか?
  • 浅:カメラの設定を自分でいじって、なんとか自分で撮れるようになるまで、6カ月ぐらいかかりました。
  • 山:そこからさらにのめり込んでいったんだと思いますが、生き物のアリを撮るようになったのは…?
  • 浅:いつものように朝露を撮っていると、カメラの構図のなかにアリが入ってきちゃいました。私、虫が大嫌いだから、「どっかに行けー」って息を吹きかけながらもシャッターを切ったんです。それが、後で見てみたら逆光でアリの体が透けて、案外きれいだった(笑)。アリも被写体でいけるのかなと思ったのがきっかけですね。
  • 山:意図せずに偶然出会ったわけですね。
  • 浅:ただアリは水滴と違って、言うことを聞かないのでなかなか撮れないんです…。
  • 山:生き物ですもんね。なかなか思い通りにいかないときは、どう対処されるんですか?
  • 浅:写真はいろんなアレンジができるってことも学んで、小道具を使ったりしています。小道具は100円ショップのトレイやスポイトも使ったりしていますね。あとは…、思った構図になるまで時間をかけて待ちます!
  • 山:どれくらいの時間を…?
  • 浅:一番長くかかったものだと…、6時間。
  • 山:1枚に、ですか…!?
  • 浅:1枚に、です。アリが2匹同時にいる構図をどうしても撮りたくて、6時間待ってようやく撮れたことがありました。もともと1匹のアリを撮ろうとしていて、設定をいじっているときに偶然2匹やって来たんですね。でも、そのときはよそ見していて撮れなくて…。「1回来たんだから、もう1回来るはず」って信じて、結局6時間…。私、しつこい性格なのかも(笑)。

大切なのは「夢中になれるものの発見」

  • 山:日本だけでなく、海外からもオファーがあるそうですね。
  • 浅:そうです。最初のころにカナダで500pxっていうサイトに写真を投稿していたんですけど、そこの写真を見たイギリスやアメリカの方から雑誌に載せたいとか、カレンダーにしたいっていう話をいただきました。その頃は日本では全然注目されていませんでしたね。そのうち、関西のお昼の番組『ミヤネ屋』で写真を紹介されてから、写真集のオファーなどを日本でもいただくようになりました。
  • 山:そこから変化はありましたか?
  • 浅:180度生活が変わりました。カメラを持つ前にはテレビに出るなんてことはありえなかったですから。キヤノンさんやソニーさんからも、新製品の作例を撮るお仕事や、講座で水滴の撮り方を教えるお仕事などをいただいています。
  • 山:人に教えるって簡単ではないと思いますけれど…。講師としてレクチャーされて、いかがですか?
  • 浅:教えるほど難しいものってないですよね。1回につき2~3時間の講座で、基本を教えたらすぐにうまく撮れるわけがないんです(笑)。でも「講座を受ければこんな水滴が撮れるようになる」って思って参加する人もいるわけで、「同じように撮れないじゃないか!」って言われたり、辞めちゃう人もいたり…。くじけずに続けてもらうことも大事ですから、難しいですね。
  • 山:もっと多くの人に、自分と同じように撮ってほしいという想いはありますか?
  • 浅:その想いはとてもあります。
  • 山:お話をうかがっていると、根気も大事だと思うのですが。
  • 浅:水滴の写真に限らずなんですけれど、大事なのは根気と…、自分が夢中になれること、心から好きになれるものを見つけるっていうことが一番大事ですね。これって、結構難しいことだと思うんです。私は幸いにも夢中になれる大好きなものに出会えましたけれど、一生のうちにそれほどのものに出会える確率って誰しも低いんじゃないかな…。その点では、私はかなりラッキーですね。

情熱のカタチは変わる

  • 山:人々に認知されて、お仕事の形も変わったりするなかで、情熱は全然変わらないものでしょうか?
  • 浅:正直に言うと…情熱のカタチはちょっと変わります。最初のころはただ「好き」という気持ちだけで写真を撮っていましたけど、今はお仕事として撮ることもあります。そうなると「好き」とはまた別の理由があって撮るわけですから、情熱は少し違ったものになると感じています。
  • 山:次は、自分と同じような写真を撮れるような方たちを育成していくことに情熱が向かうかもしれないのでは…?
  • 浅:そうなんです! それは強く思っています。

「自分のため」から「人のため」に向かう情熱

  • 山:自分のためだけに写真を撮る、というステージから、誰かのためにというステージに移り始めているということですね。
  • 浅:そうですね。今は。
  • 山:浅井さんがおっしゃった、情熱が遷移していくという気持ちはすごくわかります。会社を立ち上げたときは、単純に「立ち上げる」ことが大事でしたが、次は経営者として社員たちを養う責任を背負います。「夢」だったものが、とても「リアル」なことに変わったわけです。仲間も増えてようやく落ち着いたと思うと、今度はみんなが新しいことを求めます。そうすると、それに応えて新しいこと・ものを生み出さないといけない。だから僕も情熱がいろんな方向に分散しているのでは…と感じることもあるんです。でも、結果として積みあがったものが自分の財産になりますし、情熱の分散や変化がすごく楽しい…と、自分の気持ちも切り替えられるようになりました。
  • 浅:なるほど、やはり「楽しむ」っていうのが大事ですよね。
  • 山:仕事は楽しんでやらないとダメ。仕事だからこそ楽しまないと、って思います。
  • 浅:そして、「情熱」。
  • 山:情熱がなければ発想も芽生えないと思うんです。
  • 浅:やっぱり情熱があって、楽しめるっていうのが大事ですよね。

アイデアの力で、道を切り拓く

  • 山:浅井さんの写真を見ると、スタジオでのセッティングやカメラの知識・専門的な技術がなければできないと思う人は結構いると思います。
  • 浅:最初に手に入れた一眼レフのカメラとレンズが、初心者用だったこともあって、余計に「こんなカメラで撮れるわけがない。フェイクだ」ってよく言われました(笑)。アリは「接着剤で留めてるんだ」とか、「CGだ」とか…。
  • 山:「できるわけない」って思われるほど、すばらしいということです。でも、浅井さんが撮影に使う小道具って、ほとんどがすぐに用意できそうなものですね。
  • 浅:自宅の中の撮影用のセッティングはとてもコンパクトで、30cm四方ぐらいのスペースです。本当に簡単だから、誰でもやろうと思えばすぐにできます。
  • 山:制約を制約だと思わずに、発想ですべて乗り越えているからこそ、オリジナリティの高い作品ができているんでしょうね。
  • 浅:うん。そうかもしれないですね。
  • 山:予算や場所がしっかりとされたプロの方には、反対に、浅井さんの写真と同じものを撮るのは難しいのではないでしょうか。例えば…、プロの人たちがアリを使ってCMを撮ろうってなると「アリをどうやって固定しようか」とまず考えるはずです。そして「できるわけない」という結論になって、CG処理にしよう…とか、既存の方法を選ぶのではないかと。かつ、100円ショップのグッズを使う発想は、プロではきっと思いつきません。でも、浅井さんが最初に取り入れた方法を知ったら「なんだ、こんなことなのか」と気づく。企業も似ているところがあると思うんです。新規ビジネスを立ち上げるとき、「この分野は専門ではないからできない」とか、「予算が高いから無理」だとか…、いわゆる「常識」を考えがちです。でも、浅井さんのお仕事の方法をお伺いすると、全然違う発想とアイデアの力で作品を作り出しているところがすごいなと思うんですよね。

「情熱」+「楽しむ」ことが一番重要

  • 山:我々が提供しているサービスでは、新規事業の立ち上げが結構多いんです。例えば、携帯電話会社が新たに農業に挑戦してみるとか、メインとは全然違う事業にチャレンジする企業が多かったりします。
  • 浅:面白いですね。
  • 山:でも、その新しい分野の専門家がいないと二の足を踏んだり、「なんでこんなことやるんだ」というような反対意見も出てきます。全く畑違いのことをやるとなると「こんな仕事をするとは思わなかった!どうして!?」と思う社員も少なからずいます。でも、我々は「人から変えていく」んです。「やる意義」を見出してもらうわけですね。「こんなことできるはずがない」という固定観念を持っている人がいたとしても、一緒に膝を突き合わせながらマインドを変えていく。「できるんだよ」って。
  • 浅:なるほど。そうなんですね。
  • 山:「できる」という結果を少しずつ出していくと、みんなだんだん「できるかも」と思い始めて、さらに結果を積み重ねると「確かにできるね」という自信につながっていく。気づいたら当事者の人たちが情熱を持って新規事業を推進していくという結果が生まれます。そういう形が理想で、成功パターンです。
  • 浅:結局は当事者の方々が、情熱を持って自ら楽しんでやる、っていうのが成功につながるんですね。

チャンスをつかみ、チャレンジをして、マインドを変える

  • 山:僕もコンサルをずっとやっていますが、はじめはどちらかというと落ちこぼれでした。いろいろな方々と出会えたおかげで、キャリアを積んで、お客さんからコンサルとして認められるようになり、会社を運営できるようになったんです。ですから、コンサル未経験でも、本気・やる気・想いさえあれば、仕事はちゃんとできるんだよっていう話もよくしています。浅井さんがふと思い立ってカメラを買ったというのは、まさにチャンスを自らつかんだ瞬間だったと思うんですが、そういったきっかけや機会…つまり、チャンスさえあれば、本人がチャレンジすることで道は切り拓けると信じています。
  • 浅:そういうきっかけを作って差し上げるお仕事なんですね。
  • 山:そのとおりです。会社としては、社員たちがやりたいことに取り組め、その上で成長もできる環境を提供するようにしています。お客様に対しても同じです。会社そのものではなく、中で働く「人」が会社の価値を作るわけですから。「人」を巻き込みながら、新しいことにチャレンジしていく…、そのために我々は現在の仕事をやっています。
  • 浅:それは将来が本当に楽しみですね!
  • 山:浅井さんも、いろんな壁にぶつかったり、これから先の選択肢が増えたりして大変かもしれませんが、いろんな可能性がある浅井さんの次の取り組み、とても楽しみにしています。
  • 浅:私自身も、ほんとに楽しみですから、「楽しんで」頑張ります!
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PROFILE

水滴写真家
浅井美紀

北海道帯広市生まれ。帯広市内の小、中学校卒業後、管内の高校へ進学。会社員として働きながら、仕事を終えた後や休日にカメラを手にして小さなものと向き合う。幼い頃から写真を見るのが好きで、作品観賞として写真投稿SNS「500px」に登録。登録2年後の2013年に念願の一眼レフを購入し、撮影をはじめる。あるとき、マクロレンズを通して見た葉の上の朝露に「どんな宝石よりも美しい」と感動し、「どこにでもあるけれど見逃してしまったり、肉眼では見えにくい美しく小さな世界を撮りたい」と思うようになり、今日まで撮影を続けている。