■ この記事がおすすめな人
・新規事業担当者の人選に悩んでいる経営企画部門
・社内から新規事業のリーダーを選ぶ必要がある経営層
・新規事業制度を立ち上げたが担当者が定まらない企業
・若手に任せるべきかベテランに任せるべきか悩んでいるマネージャー
・社内公募制度を導入しているが成果が出ていない企業
・新規事業人材の育成を検討している人事部門
新規事業は「誰がやるか」が最も重要な要素のひとつ
新規事業を成功させるためには、市場選定、ビジネスモデル、資金、組織体制など様々な要素が重要です。
しかし実務の現場で多くの企業を見ていると、強く感じることがあります。
新規事業では市場やアイデアだけでなく「誰が担当するか」という人材要素が成功確率に大きく影響する、ということです。
どれだけ魅力的な市場があり、優れたアイデアがあったとしても、担当者が動かなければ事業は前に進まないとういうことが多々あります。
逆に、適切な担当者がいれば、
・市場を自ら調査し
・仮説を立て
・関係者を巻き込み
・小さな検証を回しながら
・事業の形をつくっていく
というプロセスが自然と回り始めます。
つまり、新規事業においては
アイデア以上に「人材アサイン」が成功確率を左右する重要な意思決定なのです。
しかし多くの企業では、この担当者の選び方が体系化されていません。
・若手のエースに任せる
・ベテラン管理職に任せる
・社内公募で手を挙げた人に任せる
といった形で決まることが多く、明確な基準がないまま人選が進んでしまうケースも少なくありません。
では、なぜ新規事業担当者の人選は難しいのでしょうか。

新規事業担当者の人選が“3つのパターン”で決まってしまう
多くの企業で新規事業担当者の選び方を整理すると、次の 3つのパターンに集約されます。
① 若手エース抜擢型
優秀な若手社員を抜擢して、新規事業を任せるパターンです。
将来性や行動力に期待して任命されるケースが多い一方で、
・社内調整の経験が不足している
・意思決定権がない
・組織を巻き込む力が弱い
といった理由から、途中でプロジェクトが止まることがあります。
② ベテラン管理職アサイン型
経験豊富な管理職や事業責任者が新規事業を担当するパターンです。
意思決定力や社内ネットワークが強みになる一方で、
・既存事業の責任が重い
・リスクを取りづらい
・探索より管理思考になりやすい
といった課題が生まれることがあります。
③ 社内公募・手挙げ型
近年増えているのが、社内公募制度による新規事業人材の選抜です。
熱意のある人材が集まりやすいメリットがありますが、
・テーマとの相性が弱い
・経験不足
・組織の巻き込みが難しい
といった問題が起きることも少なくありません。

重要なのは、どの方法も必ずしも間違いではないということです。
問題は、「どの人材が新規事業に適しているのか」という基準がないまま人選が行われていることにあります。


しかし、役割・人選基準・評価制度が整理されていないケースも
新規事業担当者の人選が難しくなる背景には、主に次の3つの構造があります。
① 新規事業担当者の役割が定義されていない
多くの企業では、新規事業担当者に
・アイデア創出
・市場調査
・企画書作成
・社内調整
・PoC推進
といった幅広い役割を期待しています。
しかし実際には、新規事業は「探索活動」であり、
・仮説を立てる
・実験する
・学習する
という行動が中心になります。
この役割が整理されていないため、「誰を担当者にするべきか」が曖昧になってしまいます。
② 人材の選び方が決まっていない
新規事業担当者の選定は、
・上司推薦
・人事判断
・社内公募
など、企業によって様々です。
しかし、どのような能力や特性を持つ人材が適しているのかという評価軸が整理されていないケースが多く、結果として人選が属人的になってしまいます。
③ 人事評価制度が整備されていない
もう一つ見落とされがちな問題が、評価制度です。
新規事業は、
・成果が出るまで時間がかかる
・失敗が多い
・途中で方向転換が起きる
という特徴があります。
しかし既存の評価制度は
・売上
・利益
・効率
といった既存事業の指標で設計されています。
そのため、新規事業に取り組む人材が
・評価されにくい
・キャリアリスクを感じる
という構造になってしまうこともあります。
新規事業担当者を選ぶ5つの視点
新規事業担当者を選ぶ際には、スキルだけでなく
マインドセットも含めた5つの観点で評価することが重要です。
① 顧客課題への強い関心
新規事業は顧客課題から始まります。
そのため、
・顧客に興味がある
・現場の声を聞く習慣がある
・問題を深く理解しようとする
人材は新規事業に適しています。
② 仮説思考
新規事業には正解がありません。
重要なのは
・仮説を立てる
・小さく試す
・結果から学ぶ
という思考です。
③ 巻き込み力
新規事業は一人では進みません。
社内外の関係者を巻き込みながら進めるため、人を動かす力が重要になります。
④ 不確実性を楽しめるマインドセット
新規事業は
・失敗が多い
・方向転換が多い
・成果がすぐ出ない
という特徴があります。
そのため、不確実性をストレスではなく挑戦として受け止められる人材が適しています。
⑤ 学習スピード
新規事業で重要なのは、「正しい判断」ではなく「早く学ぶこと」です。
そのため、
・フィードバックを受け入れる
・仮説を修正できる
・知識を吸収する
といった学習能力が重要になります。

新規事業では「責任者・中心推進者」が最も重要になる
ここまで、新規事業担当者に求められる5つの要素を説明してきました。
ただし実務で重要なのは、すべての能力を1人に求める必要はないということです。
新規事業は多くの場合、
・顧客探索
・仮説検証
・社内調整
・意思決定
・専門知識
など、複数の役割が必要になります。
そのため、新規事業を成功させている企業では、個人ではなく「役割設計」でチームを組むことが一般的です。
ただし、その中でも特に重要な役割があります。
それが、新規事業の責任者、そして中心となって推進する人材です。
新規事業では、不確実性が高く、意思決定も多く、プロジェクトが止まりやすい状況が頻繁に発生します。
そのため、
・仮説を立て
・検証を進め
・関係者を巻き込み
・意思決定を前に進める
中心人物が存在しなければ、プロジェクトはほぼ確実に止まります。
言い換えると、新規事業は「誰が責任者として推進するのか」によって成否が大きく左右されるのです。
① 探索リーダー(中心推進者)
新規事業の中心となって仮説検証を推進する役割です。
主な役割は次の通りです。
・顧客課題の探索
・仮説の構築
・検証実験の設計
・PoCの推進
・社内外の関係者の巻き込み
この役割こそが、新規事業のエンジンになります。
前述した
- 顧客課題への関心
- 仮説思考
- 不確実性への耐性
- 学習スピード
といった特性が最も求められます。
② 事業スポンサー(経営・事業責任者)
新規事業では、社内の意思決定やリソース確保が大きな壁になります。
そのため、
・意思決定支援
・組織調整
・投資判断
を担うスポンサー役が重要になります。
スポンサーがいることで、
・意思決定が早くなる
・組織の理解が得られる
・リソース確保がしやすくなる
という効果があります。
③ 専門サポート(機能部門)
新規事業では、
・技術
・法務
・財務
・営業
など、様々な専門知識が必要になります。
そのため、必要なときに専門家がサポートできる体制を整えておくことも重要です。

新規事業成功の鍵は「中心推進者+支援体制」
新規事業は、1人の天才だけでも組織全体の合議でもうまくいきません。
重要なのは、中心となって推進する人材と、それを支える体制の組み合わせです。
特に中心推進者が明確でないプロジェクトは、
多くの場合、
・意思決定が遅れる
・責任が曖昧になる
・議論だけが続く
という状態になりやすく、結果として止まってしまいます。

担当者選びと制度設計をセットで考える
もう一つ重要なのが、人材アサインと制度設計はセットで考えるという視点です。
特に新規事業では、次のような制度が整備されていないと担当者が動きにくくなります。
① 評価制度
新規事業は短期で売上が出ないことが多いため、
・顧客インタビュー数
・検証回数
・仮説学習
などの 学習指標(Learning KPI) を評価に入れることが重要です。
② 専任時間
兼務だと既存業務が優先されてしまいがちです。
そのため、
・専任化
・業務時間の確保
といった設計も必要になります。
③ 意思決定プロセス
新規事業では小さく試すことが重要です。
そのため、
・PoC予算
・意思決定フロー
を簡略化する仕組みがあると、検証スピードが大きく上がります。

まとめ:新規事業は「誰を責任者にするか」で決まる
新規事業の成功は、市場でもアイデアでもなく、人材アサインから始まります。
そして特に重要なのは、責任者として中心となって推進する人材を明確にすることです。
新規事業では、
・顧客課題への関心
・仮説思考
・巻き込み力
・不確実性への耐性
・学習スピード
といった特性を持つ人材が中心となり、そこにスポンサーや専門家の支援体制が加わることで、プロジェクトは前に進みます。
つまり、新規事業は「アイデア」ではなく「人と役割設計」で決まる。
誰が中心となって推進するのか。
誰が意思決定を支えるのか。
どんな制度で挑戦を支えるのか。
この設計こそが、新規事業成功の最初の一歩になります。


